星の一生
1.星の誕生
アリストテレスは星を完全な物質であり永遠に普遍の物と定義しましたが
全ての物には始まりがあり終わりがあり、星もまたその例外ではありません。
もちろん生命体と比べればほとんど無限と言えるほどの寿命を持っていますが。
ここでは恒星が生まれてから死を迎えるまでを順に追って紹介します。
宇宙空間に漂う低音のガスの塊を暗黒星雲と呼びます。
このガスの一部になんらかの理由で密度の高い部分が発生すると
その部分は重力を発するようになり、その結果周囲のガスや
他の物質を引き寄せるようになります。
周囲の物質を取り込む際に、重力から熱が発生し加速度的に温度が
上昇していきます。それによって質量が増し、熱を発するようになった
恒星の始まりを原始星と呼びます。
生まれたばかりの原始星は周囲の物質を取り込むのをやめ
今度は取り込んだ物質を自らの重力で圧縮、収縮し、密度を上昇させていきます。
その規模が一定より大きく、温度の上昇が1000万度を超えた場合
ガスの中でも大きな割り合いを占める水素が核融合反応を起こし始めます。
この時期を収縮期と呼び、大体5000万年〜1億年ほどこの状態が続きます。
2.星の成長〜安定
収縮期が1段落し、温度の上昇も止まると、主系列星と呼ばれる時期に入ります。
主系列星は恒星の一生において最も長い時期で約100億年ほども続き
我々の太陽系の太陽も含め、ほとんどの恒星が現在主系列星として光を放っています。
主系列星は主に水素をヘリウムに核融合することで熱エネルギーと放射しており
1000万度を超えるその温度から考えると非常に安定した温度を保っています。
どれくらい安定しているかと言うと、それこそこの地球上で
生命体が存在できるほど安定しており
仮に太陽の表面温度がその10%でも上昇すれば地球上の生命体は
全て死滅するでしょう。
ちなみに、水素爆弾は主系列星と同じく水素に核融合反応を起こさせ
ヘリウムを精製することによって起こる熱を利用しています。
つまり小型の太陽を瞬間的に地球上に作り出すのと同じことということで・・・恐ろしい兵器です。
主系列星が長い年月をかけて中心部の水素をヘリウムに変換しきると
今度は中心部に発生したヘリウムが核となり、中心部が圧縮された結果
温度が上昇します。
すると外層部の水素の核融合反応が加速し、膨張していきます。
星全体が膨張し、大きく膨らんだ結果、限りある熱エネルギーは分散し、
表面温度が下がります。
すると恒星の光は赤く変化し、非常に巨大な赤色巨星と呼ばれる天体になります。
この状態の恒星の大きさは太陽の数百倍に達する物もあり
アンタレスやアルデバランといった、観測的にも非常に目立つ星がこれにあたります。
この時期はだいたい10億年ほど続くと言われており、その先どうなるかは
その天体の元の質量によって数種類に別れます。
まず、太陽程度の大きさの恒星は、白色矮星と呼ばれる天体へと
変化して行きます。
赤色巨星となった恒星の外層部分は核融合に必要な温度に達さず、
外部に向かって拡散します。
すると中心部の水素が核融合によって変化したヘリウムの核だけが残ります
太陽程度の大きさの天体の場合はヘリウムの収縮による熱上昇が
ヘリウムが核融合反応を起こすのに必要な温度に達さず、核融合反応が収束し
温度が徐々に下がって行き、その一生を終えます。
我々の住む太陽系の太陽が生まれて50億年弱と言われていますから
現在は主系列星の時期の中間ぐらいということになります。
あと50億年もすれば赤色巨星となり表面温度が数千度下がるので
もちろん太陽系の生命体は死滅し、それから10億年後、
白色矮星が光を失うとともにこの太陽系は光を失うことになるでしょう。
それまで人類がその歴史を続けていたとすれば、人類の英知はそれをも
乗り越えると信じていますが。
ちなみにこの白色矮星の大きさは地球程度と言われており、
熱をほとんど発さないので肉眼で確認することはまずできません。
周囲の水素が拡散したヘリウム核の質量が太陽よりも大きく
収縮による中心温度の上昇が1億度を超えた場合
今度は水素でなくヘリウムが核融合反応を起こし始め、
炭素や酸素に変換されて行きます。
当然ですがこのヘリウム核は主系列星よりずっと小さく、その結果中心温度が
表面に容易く伝達され、表面温度が非常に高くなります。
仮に我々の太陽がこの状態(セファイド変光星と呼ばれます)になったと仮定すると
まず赤色巨星になる仮定での温度低下によって凍りついた地球は
セファイド変光星によって一気に焼き尽くされることになります。
ひどい話です。
3.星の「死」
セファイド変光星が中心部のヘリウムを使い果たすと、またも質量によって
星の一生は2つの道に別れます。
中心部のヘリウムが使い果たされると
変換された炭素や酸素が収縮し、温度が上昇するわけですが
質量が足りず、炭素、酸素が核融合反応を始める温度に達さなかった場合は
周囲のヘリウムは拡散し、これもまた白色矮星となり、温度が下がり、
その一生を終えます。
天体が一定以上の質量を持っていた場合は中心温度が5億度を超え、
炭素、核融合反応を始めます。
さらに周囲のヘリウムも核融合反応を起こし、定期的に膨張と収縮を繰り返し
ミラ型変光星と呼ばれる状態になります。
炭素、酸素は非常に反応速度が速いので、この時期は数万年と非常に短く
最終局面に向けて加速度的に進んで行くことになります。
炭素、核融合反応によて作られたネオン、マグネシウムはさらに
核融合反応を進めシリコンや硫黄になります。
中心温度が15億度を超えると酸素が核融合反応でケイ素となり
25億度を超えるとそのそれぞれが核融合反応を起こし鉄になります。
鉄はそれ以上核融合反応を起こさないのでただひたすらに
中心温度が上がって行きます。
それが100億度近くに達すると、鉄が光分解反応を起こし圧力が
急激に低下します。
すると星は内側に向かい爆発的に収縮し、爆縮と呼ばれるこの反応の後
それが跳ね返る形でエネルギーが解放され、超新星爆発と呼ばれる
爆発を起こします。
この時光分解によって作られた中性子が飛び散る鉄にぶつかることで
重い原子に変わりウランや金などの原子番号が上の物質が作られると言われています。
超新星爆発が起こると、質量小さい場合は中性子星が
大きい場合はブラックホールが恒星のあった場所に残ると言われています。
中性子星は半径10kmほどの中性子の塊で、質量があまりに大きい場合は
さらにこの中性子星が自重で崩壊し、ブラックホールとなります。
ブラックホールはあまりの重力にその重力圏から光すらも脱出できないために
視認することができず、ブラックホールに引き寄せられた物体は
原子単位まで分解されると言われています。
恒星の一生は軽い元素から重い元素を作り出す工程とも言えます。
我々の生活を形作っている様々な物質も、遥か昔に超新星爆発で飛び散った
物だと言われています。
しかしだとすると宇宙ができて150億年と言われているのと矛盾しているような気がしますが
それについては後日また勉強してみたいと思います。
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